お米の豆知識
ごはんを炊いたものの、残ってしまった”残りごはん”。次に食べるときに温め直して食べるのもいいけれど、ほんのひと手間加えれば、おいしい料理に早変わりします。この企画では、「最低限の手間でちゃんとおいしいものが食べたい」という自炊料理家・山口祐加さんが考案した、残りごはんレシピを3回に渡ってお届け。初回は、疲れたからだにやさしく沁み渡る「レンチン梅鮭おかゆ」をご紹介します!
7歳で自炊を始めた山口さんの
「ごはんをおいしくいただく工夫」とは?
料理が苦手、面倒くさいなど、マイナスなイメージを抱いている人に自炊の魅力を伝えるべく、SNSやnoteで発信をしている自炊料理家の山口祐加さん。7歳の頃、共働きで多忙な母から「ゆかちゃんが夜ごはん作らないと、今晩のごはんないの。作れる?」と”優しい脅し”を受けて、料理に親しむように。生っ粋のごはん好きの山口さんは、ごはんに汁物プラス一品の「一汁一菜」を作ることが多いそう。
「外食も好きですが、お店のメニューの中から選ばなくてはなりません。でも自炊は、自分が嫌いな食材は入れなくていいし、好きな味つけで食べたい量を作れるのがいい。私は焼き魚やお味噌汁など、地味なものが好きな『味覚マイノリティ』なので(笑)、シンプルな味つけで簡単に作れるメニューが好きですね」
レシピをうかがう前に、山口さんの”日々のごはん事情”を聞いてみると、お米の種類から食べるときの温度まで、ごはんに対するさまざまな偏愛が。
「最近は、玄米と白米の中間的な5分づき米を食べることが多いですね。精米時に米ぬかを5割ほど残しているので、栄養価が豊富で歯ごたえもいいんです。あ、もちろん、白米も大好きですよ。うちの炊飯器は年代物なので、白米を炊いたらすぐにおひつに移すようにしています。おひつだと木が適度にごはんの水分を吸ってベタッとならないから、『ごはんってこんなにおいしいんだ!』と感動します。私の場合、おかずも汁物も熱々でさらにごはんまで熱々だと、何食べても『熱っ!熱っ!』となって味を感じる余裕がなくなるので(笑)、冷めたごはんのほうがいいというときもありますね。そもそも残りごはん自体、結構好きかも。そのまま食べるのもいいですが、簡単なアレンジを加えるだけでも、よりいっそうおいしくいただけると思います」
「ごはんをおいしく食べるだけでなく日々の家事効率化にも役立つ」と、自炊料理家ならではの視点でおひつの魅力を語る山口さん。
「家族が多い家庭なら、ごはんの入ったおひつを『はい、どうぞ』って食卓におけば、それぞれが好きな分だけよそうことができます。誰か1人が家族全員分のごはんを茶碗に盛るとか、地味に手間じゃないですか。『今日はこんなにいらない』って言われたりするし(笑)。洗い物は1つ増えるけど、よそう手間が省けるという点ではおひつを使ったほうが効率的だなって思います」
自炊を好きになる・楽しむコツは、面倒に感じたり、苦手だと思う工程をスキップすること。手間を省くことに罪悪感を覚えず、さまざまな方法を試して、自分の性格に合うやり方を見つけてほしいと山口さんは言います。
「食材を切る、火を使う、時間をかけて煮込むなど、料理にはさまざまな工程がありますが、そのなかで何を苦手と思うかは人それぞれ。まずは『自分はどの工程が苦痛なんだろう』と考えてみること。それがわかったら、その工程をスキップしちゃえばいいんです。カット野菜を買ったりレンジで調理したり、いまはスキップする手段はいくらでもありますから」
手間を極力省いて、残りごはんが劇的においしくなる今回のレシピは、山口さんいわく「笑っちゃうくらい簡単」。忙しくて時間がないときや疲れてパワーダウンしているときにおすすめです。自炊の楽しさや、ごはんのおいしさを再発見できるはず。
残りごはんレシピ「レンチン梅鮭おかゆ」
〈材料〉
- 残りごはん 100g(お茶碗小盛り1杯程度)
- 水 200mL
- 梅干し 1?2個
- 塩鮭 1切れ(鮭フレークでも可)
- 大葉 1枚(お好みで)
作り方
1.耐熱容器に残りごはんと水を入れ、ヘラなどでよくほぐす。
★ポイント
「最初にごはんをよくほぐしたほうが、おかゆの舌触りがよくなります。レンチンした直後のおかゆはゆるめですが、少し時間が経つとごはんが水分を吸ってねっとりしてきますよ」
2.1 はラップをせずに、電子レンジ(500W)で8分加熱する。
3.塩鮭は耐熱皿に乗せてラップをして、電子レンジ(500W)で1分加熱。火が通ったら身をほぐし、種を取り除いた梅干しと和える。
★ポイント
「塩鮭の大きさによって、電子レンジの加熱時間を20?30秒ほど加減してください。梅干しの量はお好みでOK。市販の練り梅を使ってもおいしいですよ。」
4.器に盛った 1 の上に梅鮭を好きな量をのせ、手でちぎった大葉をお好みで合わせたら完成。
実食!ごはんの甘みと鮭&梅の塩気でレンゲが止まらない!
あっという間に完成した山口さんの「レンチン梅鮭おかゆ」。早速、できたて熱々をご本人に実食していただきました!
「う?ん、我ながらおいしいです(笑)。ごはんの甘さが引き立っているし、鮭と梅干しの程よい塩気のバランスがたまりません」
鮭と梅干し、それぞれ単体でごはんと合わせることはあるけれど、この2つを和えるのはとても新鮮。どうしてこのアイデアが生まれたのでしょうか。
「意外と合わせることがない具材だったので、試してみたら見事にマッチしました。実は複数の具材を和えるとき、咀嚼回数が近いものを選ぶとおいしくなるんです。咀嚼回数がバラバラだと、かたいものだけ口の中に残ってしまうので。ほぐした鮭と練った梅って、どちらもやわらかく咀嚼回数が少ないから相性抜群なんです」
残りごはんをレンチンするだけで口当たりのいいおかゆが作れる山口さんのレシピ。ホッとするやさしい味なので、朝ごはんや夜食などさまざまなシーンに最適の逸品です。
次回も誰でも簡単に作れて、満足感いっぱいの「残りごはんレシピ」をお届けします。どうぞお楽しみに!
山口祐加
(やまぐちゆか)
1992年東京都生まれ。自炊料理家、フードライター。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。料理初心者の大人や子どもに向けた料理教室「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通じて、自炊する人を増やすために幅広く活動を行う。著書は『ちょっとのコツでけっこう幸せになる自炊生活』(エクスナレッジ)ほか。
Twitter :
Tweets by yucca88
note :
https://note.com/yucca88/
撮影:今井裕治 取材・文:川端美穂