おいしいごはんの炊き方
炊飯器に残ったごはんは、どのくらい保温してよいものか迷いますよね。「何時間美味しさをキープできる?」「冷凍した方が美味しい?」こんな疑問を持つ人も少なくないはず。そこで、電気代の節約も含めた炊飯器の保温機能の上手な使い方と、ごはんの保存方法をまとめました。
不満の声が多い炊飯器の機能面は?
ごはんを手軽に炊ける炊飯器ですが、ユーザーは大なり小なり不満を抱えているようです。毎日使うアイテムだけに、ちょっとしたデメリットであっても大きなストレスになりかねません。では、具体的にどのような面で不便を感じるのか見ていきましょう。
・保温すると味が落ちる
・保温するとごはんが乾燥する
・美味しく炊けない
・余分な機能が多すぎる
・食洗器が使えない
・デザインや色が悪い
・内なべのコーティングがすぐに剥がれた
デザインやごはんの劣化の早さのほか、機能面での不満が多数あるのがわかります。中でも目立つのは保温機能についての意見。
炊飯器を使えば、炊きあがり後自動で保温機能に切り替わり、いつでも温かいごはんが食べられます。帰宅がバラバラで家族の食事時間に差があったり、夜に炊いたごはんをそのまま朝食べたり、そんな使い方ができることこそ炊飯器の魅力ですよね。
それなのに、その保温機能に不満や疑問を抱えたままでは、せっかく炊飯器を使っているのにもったいないです。
そこで、いつでも美味しいごはんを食べるために、炊飯器の保温機能について詳しくチェックしていきましょう!
ごはんの保温時間はどれくらいOK?
炊飯器で保温した場合、どのくらいの間ごはんが美味しいまま保存できるのでしょうか。重要なのは保存時間によって保存方法を変えることだったのです。
一般的には5~6時間
保温したまま炊きたての美味しさをキープできるのは、一般的な炊飯器で5~6時間ほどといわれています。それ以降はどうしてもごはんの水分が抜けて味が落ちたり、食感が悪くなったりしてしまいます。色も、炊きたてと比べると黄色味を帯びてしまい、見た目的にも美味しさが減ってしまいます。
そのため、朝炊いたごはんを昼食時に食べる分には、ごはんの味わいは炊きたてとほとんど変わらないといえるでしょう。しかし、前日の夜炊いたごはんを朝にも食べる場合、保温したままだとパサつきや変色が気になることもあります。長時間の保存になるときは炊飯器から出して別の容器で保存し、食べる時にあたためることをおすすめします。
保温に優れた炊飯器ならさらに長時間美味しさをキープ
上記の保温時間はあくまで一般的な炊飯器の場合です。最近販売されている炊飯器の中には、さまざまな保温機能を搭載した高機能なものもあります。
例えば、内なべの中の空気を抜きごはんの酸化を防ぐ真空保温に対応する炊飯器や、数時間おきにスチームを送り込んで乾燥を防ぐ炊飯器などがあります。こうした炊飯器ならごはんを乾燥や劣化から守ってくれるため、丸1日美味しさをキープすることが可能です。
また、内ぶたに親水機能を持たせて薄い水の膜を張り、保温中の乾燥を防ぐ工夫を施した炊飯器もあります。このような内ぶたには、保温中に内ぶたに付いた水滴が炊飯器を開けたとき、ごはんに流れ落ちずに水分をキープできるというメリットもあります。
保温することが多いご家庭では、ごはんの美味しさを保つ保温機能に優れた炊飯器を選んでみてはいかがでしょうか。
長時間保温するとごはんはどうなる?
炊飯器の中で、ごはんが黄色くかたくなってしまったことはありませんか?長時間ごはんを炊飯器で保温し続けると、水分が抜けてパサついたり、かたくなったります。また、つやがなくなり、嫌な臭いがすることも。なぜ長時間保温しておくとごはんがこうした状態になってしまうのでしょうか。
ごはんは糖質と食物繊維からなる炭水化物。実はこの炭水化物には、糖とアミノ酸のメイラード反応により褐色物質であるメラノイジンが作り出されるという性質があります。そのため、温かい炊飯器の中でどんどんメラノイジンが増加し、ごはんを変色させてしまうのです。
腐敗によってイヤなニオイが発生することもあります。その原因は、ごはんにもともと存在するバチルス菌。この菌は高温の中でも死滅しません。ごはんに含まれる豊富な水分や栄養素、そして温かな炊飯器の状態は、繁殖するのにもってこいの環境なのです。
変色や腐敗が起こらないよう、メーカーが推奨する時間を超えて保温するのは避けた方がよいでしょう。
保温を続けると電気代がかさむ?
長時間保温をすると電気代についても気になるのではないでしょうか。電化製品は家のいたるところで使用しているため、マメな節電の積み重ねが、結果的に大きな節約につながります。では、炊飯器の保温機能を利用すると、どのくらい電気代がかかるのでしょうか。
炊飯した場合、平均で約4円かかるといわれています。これは、保温1時間につき15.0Whかかる炊飯器で10時間保温したときの電気代とほぼ同じです。7時に朝食を、19時に夕食を取る場合、保温する方がやや電気代がかかるという計算になりますね。ただし、消費電力の少ない炊飯器については、この限りではありません。
炊飯器にはマイコン・IH・圧力IHの3タイプがあります。この中でもっとも電気代がかからないのは圧力IHタイプ、反対にもっとも電気代がかかるのはマイコンタイプの炊飯器です。また、古い機種よりも新機種の方が消費電力は少ないというケースも多いです。
つまり、状況によっては1日程度であれば、炊飯と保温で炊飯器にかかる電気代にはさほど変わりはないといえるでしょう。ただし、炊飯する回数やお米の量、地域によっても電気代が異なります。細かくは使用機種・炊飯量・地域の電気代を含めて考える必要があります。
炊飯器で保温するときにしてはいけないこと
炊飯器でごはんを保温するときに「してはいけないこと」をご存じでしょうか。注意事項を守らないと、炊飯器の故障や内なべの中で雑菌が増殖してしまう原因にもなりかねません。ここでは、保温機能を使用するときの注意点を6つ紹介します。
1.決められた時間を超えて、保温機能を使用しない
炊飯器にはそれぞれメーカーが推奨する保温時間が定められています。この時間を超えた場合、ごはんがどんな状態になってもメーカーは保証してくれません。さきほど解説したように、ごはんを長時間保温すると、パサつきだけではなく黄ばみや腐敗が起こることもあります。
2.しゃもじを入れたまま保温しない
ごはんをよそったしゃもじを、内なべの中に入れたまま保温してはいませんか? 使用したしゃもじの取手には、手から雑菌が移っている可能性もあります。そのまま雑菌にとって栄養価たっぷりのごはんと一緒に保温すると、中で雑菌が繁殖してしまいます。たとえきれいに手を洗っていたとしても、しゃもじは外に置いておくように心掛けてくださいね。
3.白米・無洗米以外のごはんを保温しない
例えば、味付きごはんや炊き込みごはんを作るときには家族が食べる時間が違うと、そのまま炊飯器で保温したくなるかもしれません。しかし、ほとんどのメーカーで白米以外を炊飯器のまま保温しておくことは推奨されていません。その大きな理由は、炊飯器のニオイ移りや傷みを防ぐためです。
味付きごはんなどには調味料が使用されているため、長く炊飯器の中に置いておくとニオイが本体内部に染みついてしまう可能性があります。また、塩分などを含んだ水蒸気に長くさらされることで、金属やパッキンが傷むこともあります。さらに、炊き込みごはんの具材に含まれる水分のせいで、ごはんがベチャついてしまうことも。
白米以外のごはんの保存は、炊飯器から取り出して別の容器に移し、冷蔵もしくは冷凍して保存しておくのがベストといえます。
4.冷やごはんを継ぎ足して保温しない
炊飯器の中に残ったごはんの量が、冷凍保存するには中途半端なときもありますよね。そんなとき、ちょっと置いておいて、次にごはんを炊いたときに継ぎ足して保温したくなりませんか? しかし、継ぎ足し保温は実はNGです。いったん外に出したごはんを炊飯器に戻すと、パサつきや腐敗が進みやすくなります。
5.長時間、電源を切った炊飯器内でごはんを放置しない
電気代を節約するために、電源を切った炊飯器でごはんを保存しておくという方法を耳にすることがあります。これもできれば避けたい保存方法の一つです。通常、保温機能が働いている炊飯器の中は、保温に適した温度で雑菌や結露を防いでいます。電源を切ってしまえば、当然その機能は失われ、ごはんは乾燥・腐敗・結露を起こしやすい状態にさらされるわけです。
特に夏場の室温が高い時期は、腐敗のリスクが高まります。保温の電気代が気になるときは、別の容器に取り出して冷蔵庫か冷凍庫に保存するようにしましょう。
6.内ぶたや内なべは毎回洗浄して清潔を保つ
油や調味料によるベタつきがないためか、「内ぶたは汚れてきたら洗う」という人も少数ながらいるようです。しかし、炊飯器の内なべはもちろん、内ぶたも使うたびに洗浄するのが基本です。汚れが残っていると、保温中に雑菌が繁殖しやすくなります。
目に見えないカビや雑菌が繁殖すると、炊きたてのごはんから嫌な臭いがしたり、味が落ちたりすることもあります。美味しいごはんを炊くためにも洗える部品は全て洗うようにしたいですね。
以上の6つに注意するほか、炊飯器でごはんを保温する際は、炊きあがったときにほぐしておくことも大切なポイントです。ほぐさずに保温すると、ごはん同士がくっついて固まってしまいます。また、炊きたてのごはんは水分をたくさん含んでいますが、ほぐすことで余分な水分が飛び、保温中の劣化を遅らせることができます。
保温時間をオーバーしそうなら冷凍保存
まとめてごはんを炊いて、冷凍保存しておくというご家庭も少なくないでしょう。冷凍ごはんを美味しく保存するポイントは、できるだけ炊いた直後のごはんを冷凍するということ。しばらく保温して多少なりとも炊きたてから劣化してしまうと、冷凍ごはんも当然美味しくないものになります。反対に炊きたてつやつやのごはんを急速に冷凍させれば、解凍したときにも美味しさを保つことができます。
保温している間にごはんが劣化してしまうのは、お米に含まれるでんぷんが水分と一緒に表面に出てしまうから。つまり、劣化が起きる前に冷凍すれば、解凍しても中に水分をたっぷり含んだままのごはんを食べられるというわけです。
そのため、保温時間が長くなりそうな日は、炊いた直後に余分なごはんを冷凍保存するとよいでしょう。冷凍したときの状態が、冷凍ごはんの美味しさに直結。保温機能を使うか冷凍保存にするか、早めに判断することで、常に美味しいごはんが食べられます。
##冷蔵ではなく冷凍がおすすめ
1~2日中に食べようと思っている場合、ごはんを冷蔵保存することもありますね。冷蔵でも大丈夫ですが、できれば冷凍の方がおすすめ。その理由はデンプンの老化にあります。
ごはんに含まれるでんぷんは、ごはんの温度が中途半端に下がると生米に似た状態に戻り、ポロポロ、パサパサになってしまいます。これが、でんぷんの老化現象です。老化は冷蔵庫の温度である2~3℃の環境下で最も進むといわれています。
夜炊いたごはんを冷蔵保存し、翌朝に食べるくらいであればそれほど大きな差はありません。しかし、丸1日以上保存する場合は冷凍保存の方がよいでしょう。
美味しく冷凍する方法
ごはんを冷凍保存するときは、まず茶碗1杯くらいに小分けしてから、粒がつぶれないようふんわりとラップで包みます。市販のごはん冷凍専用の容器を使うのもおすすめです。このとき、移し替えを素早く行い、ごはんから出る水蒸気を逃がさないようにするのがポイント。水蒸気が逃げる分、ごはんから水分が失われてしまうため、手際よく水蒸気ごとごはんを閉じ込めてしまいましょう。
炊飯器から取り出したばかりのごはんは熱いので、常温であら熱を取ってから冷凍庫に入れます。熱いまま冷凍庫へ入れると、霜ができたり、他の食品に悪影響を及ぼしたりするかもしれません。急速冷凍機能の付いている冷凍庫であれば、どんどん活用しましょう。
ラップや専用容器で包んだごはんを熱伝導率の良いアルミホイルで包むと、さらに冷凍時間を短縮できます。容器の下にアルミトレーや金属製のバットを敷いておくのもよい方法です。また、小分けにする際にはなるべく平らにするか、薄い容器を選ぶようにしましょう。厚みがあると冷凍にも解凍にも時間がかかってしまいます。
以上の内容をまとめると、ごはんの美味しく冷凍するポイントは次の4つです。
・茶碗1杯分に小分けする
・水蒸気ごと素早く包む
・なるべく厚みを減らす
・急速冷凍する(もしくはアルミトレーなどを敷く)
この方法で冷凍すれば、解凍したあとはつやつやふっくらしたごはんによみがえるでしょう。
冷凍ごはんを解凍する方法
冷凍ごはんを温めるなら電子レンジ。ごはん温めボタンのような専用機能があればそれを活用しましょう。ラップで包んでいるごはんは、お皿などに乗せて解凍すると、取り出すときにやけどせずに済みます。
ごはんの量が多いと解凍にムラが出ることも。そんなときは、途中で茶碗や別の容器に移すか、ざっくりとかき混ぜてから再加熱してみましょう。こうすると加熱時間が少なくなり、電気代の節約にもつながります。
冷凍保存期間
冷凍ごはんの賞味期限の目安は約1カ月。この程度であれば、ごはんに含まれる水分量はほとんど変わらないともいわれています。ただし、冷凍したからといって、いつまでも美味しさをキープできるわけではありません。1週間を過ぎたあたりから少しずつ劣化していくため、できれば2週間以内に食べきるのがおすすめです。
炊きたてごはんを木製おひつで保存するのも手
保存時間が短いときは、炊きたてごはんを昔ながらのおひつで保存してみてはいかがでしょうか。おひつには、木製の他にも陶器やセラミックでできたものがあります。しかし、ごはんを美味しく保存するなら木製おひつが一番。木製おひつを使った常温保存には、次のようなメリットがあります。
・余分な水分を吸い取りベタつきをふせぐ
・ごはんに最適な湿度を保つ
・木の香りでごはんの風味が増す
では、それぞれのメリットについて細かく見ていきましょう。
木製おひつは余分な水分を吸い取ってごはんを美味しくする
炊きあがった直後のごはんは、表面にたっぷりと水分をまとっています。その状態のまま茶碗によそうと、湯気と一緒にごはんのうま味まで抜けやすくなってしまいます。ごはんが炊けた直後にしゃもじで軽く混ぜるのは、この余分な水分を飛ばすためです。
ここで効果を発揮するのが、木製おひつならではの特性です。炊きたてごはんを木製のおひつに移すと、ごはんから余分な蒸気を逃がしつつ、木肌により必要な水分が確保されます。そのため、おひつに入れておくだけで、ベタつきのないふっくらとしたごはんに仕上がります。
ごはんに最適な湿度を保ってくれる
木が吸い取るのは余分な水分のみ。もしごはんに水分が足りなければ、逆に水分を補ってくれるのも、木製おひつの素晴らしい点。この性質により、木製おひつの中はごはんに最適な湿度に保たれます。おひつごはんが冷めても美味しいのは、この絶妙な湿度コントロールの賜物。また、おひつに入ったごはんはすぐに冷めることはなく、食事中ほどよい温かさがキープされます。
ほんのり木の香りが移り、ごはんの風味が増す
おひつに使われる木材は主にヒノキやサワラ。アツアツのごはんを入れると、湯気にあおられて天然木のよい香りが強く立ち上ります。ヒノキ桶を使った温泉に入ったときの様子をイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。おひつにごはんを入れておくと、優しい香りがほんのり移ってごはんの風味が増します。
木製おひつの保存期間は?
ヒノキやサワラといった木材には殺菌効果があります。そのため、常温でごはんを保存しても腐りにくいといわれています。しかし、それはあくまで数時間に限った話です。常温で長く放置すれば、もちろん腐敗することも。おひつに移したごはんは、半日程度で食べきるのが理想です。その時の温度や季節に応じて、正しい使い方をすることが大切です。
保温機能を使いこなしていつでも美味しいごはんを
ライフスタイルによっては、炊飯器の保温はとても便利な機能といえます。炊き過ぎて残ってしまったときや、毎回炊く手間を省きたいときなど、活躍する場面はさまざまです。ただし、保温機能はメーカーの推奨する正しい方法を守ることが大切。
いつも美味しいごはんが食べられるように、使用前に保温時間や注意点についてチェックしておきましょう。長時間保温で美味しさをキープできる炊飯器もたくさんあるので、忙しいときなどにうまく活用していきたいものですね。