「私自身、最後の晩餐には、
土鍋で炊いた白ごはんを食べたいんです」
よし澤(東京都)
六本木ヒルズにお店を構える「よし澤」は、店主の吉澤定久さんにとって3店舗目の料亭。京都と東京で修行を重ね、これまでの2店舗がともにミシュランの星を獲得している吉澤さんにお話を伺いました。
土鍋は、ごはんをおいしく炊く最高の調理道具である
──土鍋で炊くごはんは、どこが違うのでしょうか。
店主:ごはんを美味しく炊くためには「お米」と「お水」、そして「炊飯する道具」が大事だと思っています。ごはんは、火で炊くことでおいしさが増します。ですから、火の力が直接伝わる土鍋は、ごはんをおいしく炊く最高の調理道具だと思います。さらに、土鍋は熱が伝わるまでに時間がかかりますが、一旦、伝われば保温効果は高いので、おいしさを長い時間保つという点でも優れているんです。
──お店では、どのように土鍋ごはんを提供されていますか。
店主:一斉に炊くのではなく、ひと組ごとに炊いてお出ししています。コース料理の最後に出しますから、コース内容や食べるペースが異なれば、当然そのタイミングも違ってきます。お客様ごとに、最もおいしい状態でごはんをお出しするための工夫です。
「炊き具合の異なるごはんを、食べ比べてもらっています」
──その他にも、一風変わった出し方をされていると伺いました。
店主:土鍋で炊いたごはんを、4回に分けてお出ししているんです。まず、香りのよい「煮えはじめ」、続いて「炊き上がり直後」、そして、「蒸らして甘みが出た状態」、最後に「鍋底のおこげ」。この4段階のごはんで、味わいの違いを感じてもらっています。
──なぜ、そうした出し方をされているのでしょうか。
店主:頭の中で一度、「今の時点でどういう味なのか」を考えて召し上がっていただきたいからです。おいしいごはんを食べ慣れている日本人の方でも、炊き具合の異なるごはんを食べ比べたことがある方はほとんどないですよね。しかも、普段はごはんを、おかずと一緒に食べると思うので、ごはんだけを、そしてその変化の具合を楽しんでいただきたいんです。
──お客様の反応はいかがですか。
店主:最初は「?」という表情をされます(笑)。でも、説明をすると納得されて、それぞれの特徴を比べながら食べられています。やっぱり一番おいしいと言われるのは「蒸らして甘みが出た状態」ですが、それより前のアルデンテ状態のごはんも、これはこれでおいしいねと、その違いをみなさん楽しまれています。
優れた土の土鍋で炊けば、ごはんもおいしくなる
──使われている土鍋について教えてください。
店主:これは信楽焼の特注品です。信楽の土鍋を選ぶ理由は、土が優れていると感じているからです。信楽以外にも伊賀焼など、各地で土鍋はつくられていますが、土が変わると炊いたごはんの味も変わります。修行時代から、信楽の土鍋で炊いたごはんがおいしいと感じていたので、信楽焼の作家さんにお願いしてつくっていただきました。
──吉澤さんが土鍋ごはんにこだわる理由を教えてください。
店主:最後の晩餐で何を食べる?と聞かれたら、やっぱり白いごはんを食べたいんですよね。昔、海外に行った際に、現地の食を食べていたのですが「やっぱりおいしい白ごはんを食べたいなあ」と強く感じることがありました。お肉とかおいしいお魚なども思い浮かぶんですが、それよりも土鍋で炊いたごはんを最後に食べたいと私自身が思うので、当店では土鍋ごはんをメイン料理の一つにしています。
目指しているのは、「楽しんで」帰っていただけるお店
──お店で目指しているのは、どんなサービスですか。
店主:日本料理は先付け、お椀、お造り...とお出しする順番が決まっていますが、そういった形にはこだわらず、例えば寒い日なら温かい料理からというふうに、お客様を飽きさせない構成を意識しています。土鍋ごはんも、季節ごとに異なる素材を必ず使うことで、お客様の味覚だけでなく、好奇心も満足させることを心がけています。
──おいしさ以外にも気配りされているのですね。
店主:料理がおいしいのは当たり前ですから、それに加えて「楽しんで」いただきたいんですよね。わざわざ、4段階のごはんをプレゼンテーションしながらお出ししいているのもそのためで、「よし澤、楽しかったね」と言って帰っていただけるようなお店を、これからも目指したいと思います。
六本木 よし澤
東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ ウェストウォーク5F
電話 03-6812-9799
営業時間 【水~日・祝・祝前】(昼)11:30~14:30 (L.O.12:30)
【火~日・祝・祝前】(夜)18:00~22:30 (L.O.20:00)
定休日 月曜日、第3日曜定休(火曜はディナーのみ営業)
銀座 よし澤
東京都中央区銀座1-13-8 ハビウル銀座ビル地下1F
電話 03-6264-4970
営業時間 【火~土】(昼)11:30~14:30 (L.O.12:30)
【月~土】(夜)18:00~22:30 (L.O.20:00)
定休日 日曜日・月曜日(昼)
ぎんざ 一二岐
東京都中央区銀座2-14-6 第2松岡ビル地下1F
電話 03-6278-8110
営業時間 【火~土】(昼)11:30~14:30 (L.O.12:30)
【月~土】(夜)18:00~22:30 (L.O.20:00)
定休日 日曜日(月祝の場合、日曜,月曜連休)